
インプラント治療を検討していると、GBRや骨造成といった専門用語に出会うことがあります。その中でも、治療の成否を左右する要素の一つがメンブレンテクニックです。
このメンブレンとは何か、なぜインプラント治療に必要なのか、そして「ルートメンブレン」や「オープンバリアメンブレン」などの技術がどのように使われるのか。この記事では、インプラントを検討中の方、または詳しく理解したい方に向けて、メンブレンテクニックの基礎から応用までを解説します。
インプラントと骨の関係

インプラント治療は、顎の骨に人工歯根を埋め込んで歯の機能を回復させる方法です。
しかし、歯を失ってから長期間放置していたり、歯周病が進行していたりするケースでは、インプラントを支える骨が足りないことがあります。そのままではインプラントがしっかりと固定されず、脱落のリスクが高くなってしまいます。
骨造成とは、不足している骨を再生させるために行う外科的な治療で、骨が足りない場合のインプラント治療において必要な処置です。
しかし、骨は歯肉に比べて再生のスピードが遅く、何もしないままでは、再生を待っている間に歯肉がそのスペースへと入り込んでしまい、十分な骨が形成されないことがあります。
そこで、骨の再生スペースを確保し、歯肉の侵入を防ぐ目的で使用されるのがメンブレンと呼ばれる人工のバリアです。
インプラントの「骨造成」とは?メンブレンとは?

骨の再生を助ける膜のこと
メンブレンとは、人工的に作られた膜のことで、骨造成の際に骨補填材の上から覆うように設置されます。
その上から歯肉を縫い合わせ、一度閉じて治癒と骨の造成を待ちます。
なぜ膜が必要?
歯肉の中にはさまざまな細胞が存在し、骨よりも先に歯肉細胞が侵入してくると、再生されるべき骨がうまく育たなくなってしまいます。
そうした細胞の侵入を防ぐバリアの役割を果たすのがメンブレンです。
骨造成の成功には、血液供給、骨補填材、安定したスペースが必要ですが、これらを整えるためにメンブレンは欠かせない存在です。
膜を張ることで、骨がゆっくりと再生するための環境が保たれます。
膜の種類によってはそのまま体に吸収されるタイプと、後から取り除く必要があるタイプがあります。
メンブレンテクニックとは?

メンブレンテクニックとは、骨造成やGBR(Guided Bone Regeneration=骨誘導再生)といった処置において、膜のように隔壁の役割をするものを使用し、骨の再生をサポートする技術の総称です。
例えば、抜歯後に骨が大きく失われている場合や、インプラントを埋めるスペースが足りないケースでは、骨補填材を詰め、その上にメンブレンを設置することで、骨の再生を促すことができます。
近年では、より精密で生体親和性の高いメンブレンが開発されており、インプラント治療における成功率向上に大きく貢献しています。
ルートメンブレンテクニック
とは?

残した歯根を利用する新しい考え方
ルートメンブレンテクニックとは、前歯部など審美性が重要な部分で使われるテクニックです。
通常の抜歯では歯根を全て除去しますが、この手法では頬側の歯根部分だけを半分意図的に残すことで、歯肉や骨の形を保ちます。
歯肉の陥没を防ぐ
抜歯を行うと、時間の経過とともに歯肉や骨が痩せていき、陥没したような見た目になってしまうことがあります。
特に前歯では、わずかな陥没が人工歯と歯肉の境目を不自然に見せてしまいます。
ルートメンブレンテクニックでは、残した歯根の前面が自然な輪郭として骨や歯肉を支えることで、見た目をより良くすることができるのが特徴です。
インプラントとの併用
このテクニックは、歯根の背面側にインプラントを埋入することで、残した歯根とインプラントの共存を図ります。
インプラント体の安定を確保しながら、見た目も整えるという点で有効な手段です。
注意点と適応症
全ての症例に適用できるわけではなく、感染のない歯根であること、歯根膜が残っていることなどが条件になります。
また、高度な技術が必要なため、経験豊富な歯科医師に任せることが前提となります。
オープンバリアメンブレン
とは?

閉じないメンブレンの使い方
オープンバリアメンブレンとは、メンブレンの一部を歯肉の外に露出させたまま使用するテクニックです。
従来のGBRではメンブレンを完全に歯肉で覆って縫合するクローズド法が主流でしたが、それでは術野の確保や感染リスクの点で難しさもありました。
術野の管理がしやすい
オープンバリア法では、メンブレンを意図的に露出させることで、手術後の観察がしやすくなり、必要に応じてメンブレンの除去もしやすいというメリットがあります。
清掃性の確保や術後の腫脹のコントロールもしやすいです。
歯肉や骨を温存しやすい
オープンバリアメンブレン法では、メンブレンを縫合によって完全に閉じず、歯肉を過度に引っ張って覆う必要がないため、歯肉の自然な厚みや形態をそのまま温存しやすいという特徴があります。
特に、歯肉の張力を無理にかけないことで、縫合部位の裂開や壊死のリスクを減らせるのがメリットです。
また、骨補填材を固定しながら、周囲の組織に余計な負担をかけずに骨造成を進められるため、軟組織と硬組織のバランスを保ちながら治療を行うことが可能です。
吸収性と非吸収性がある
オープンバリアで使用するメンブレンには、体内に吸収されるタイプと、後で取り除くタイプがあります。
特に非吸収性のメンブレンは、感染リスクに注意しつつ、厚みのある骨造成が必要なケースに使われます。
難易度が高く、選ぶ医師に注意
オープンバリア法は高度な技術が求められ、メンブレンの管理や感染防止に対する確かな知識と経験が必要です。
メリットも多い一方で、適切な術後管理を怠ると失敗につながるため、十分な実績がある歯科医院を選ぶことが重要です。
1ヵ月以上のオープンバリアは
推奨されない
オープンバリアメンブレンは一部を口腔内に露出させたまま使用するため、長期間そのままにしておくと細菌感染や汚染のリスクが高まります。
そのため、一般的には術後4週間以内にメンブレンの除去や、歯肉の自然治癒による被覆が必要となります。
とくに非吸収性のメンブレンを使用した場合、過度な露出期間は細菌の侵入を招き、骨造成の成功率を下げる要因にもなりかねません。
こんな方に必要となる処置

メンブレンテクニックによる処置は、以下に当てはまる方におすすめです。
- 抜歯後に骨が痩せてしまった方
- インプラントを埋める骨幅や高さが
不足している方 - 歯周病で骨が失われた方
- 前歯部の審美性にこだわる方
- 過去の骨造成が不成功だった方
抜歯後に骨が痩せてしまった方
歯を抜いた後、そのまま放置すると顎の骨が徐々に吸収され、痩せてしまいます。とくに抜歯から数ヵ月以上経っている方は、インプラントを支える骨の量が不十分になっている可能性があります。
メンブレンテクニックを用いることで、骨の再生を促し、安定した土台をつくることができます。
インプラントを埋めるための
骨の幅や高さが足りない方
骨の幅や高さが足りないと、インプラントを正しい位置や角度で埋入できません。
こうした場合には、骨補填材とメンブレンを併用して骨の造成を行い、インプラントを固定できる環境を整えます。
歯周病によって
骨が失われてしまった方
中等度〜重度の歯周病になった方は、そのままではインプラント治療が困難なため、骨再生を目的としたGBRやメンブレンテクニックによる前処置が必要になります。
見た目の良い前歯部の治療を
希望する方
前歯はとくに見た目が求められる部位です。
骨が不足したままインプラントを入れると、歯肉が陥没して見た目が悪くなる可能性もあります。
メンブレンテクニックを使って骨と軟組織の形態を整えることで、よりきれいな仕上がりを目指せます。
過去に骨移植やGBRを行ったが
骨量が安定しなかった方
以前に骨造成を行ったにもかかわらず、骨が思ったように再生しなかった場合でも、メンブレンの使用により、再チャレンジが可能な場合があります。
骨の再生環境をしっかりとコントロールできる点が、メンブレンテクニックの大きな強みです。
様々なメリットがある
メンブレンの使用

メンブレンテクニックは、インプラント治療を成功させる上で重要な技術です。
骨を再生するスペースを保ったり、骨の状態を維持したりしながら、インプラントがしっかりと骨と結合する環境を整えてくれます。
中でもルートメンブレンテクニックやオープンバリア法といった応用技術は優れた成果を挙げており、難症例に対応できる歯科医院の目安にもなります。
インプラント治療を検討する際には、単に価格や期間だけでなく、どんな技術を扱っているか、どんな方法で骨造成を行っているかも、良い歯科医院選びの基準になります。
インプラント治療の上手い歯医者の選び方
インプラントについて
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東京のインプラント専門家医 東京日本橋あさひ歯科では、インプラントに関する「60分相談(CT診断含む)」を実施しております。
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「信頼できるインプラントの専門家医の意見が聞きたい」、「インプラントが上手い歯医者を探している」、「他院でインプラントを断られてしまった」という方も、安心して当院にいらしてください。
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セカンドオピニオンとは、複数の医師に意見を求め、今後の治療や医院選びの参考にしていただくことを目的とします。
当院にはセカンドオピニオンのご相談も多数ございます。
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- 治療を引き受けてくれる医院が
見つからない方 - 使用中のインプラントの調子が悪い方
- インプラントのメーカーが分からず
困っている方 - 実績と医学的根拠に基づく
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当院のインプラント総責任者・
担当医について

院長
藤井 政樹
東京医科歯科大学出身/
博士号取得ドクター
ITI公認インプラントスペシャリスト(認定医)
当院長はインプラント治療の専門家である『ITI公認インプラントスペシャリスト(認定医)』を有し、大学病院での研鑽と指導実績を持ちます。難症例にも対応可能な安全性・確実性を提供します。
インプラントに関してお困りの方は、安心して東京日本橋あさひ歯科にご相談ください。